「2001年宇宙の旅」

 こぉ〜れを初めて観たのは中二の時、日比谷の映画館でリバイバルしたのを朝 暗いうちから友達と並んだ覚えがある。

 70ミリの大スクリーンでそりゃ〜もう爆発的な宇宙感に酔ったものです。

 コレより前にまるで宇宙で撮影してきたようだった「スターウォーズ」を観てたのだけれ ど、それを遡ること10年も前に、こんな凄いモノが出来ていたとは驚きでした。

 最近のCGよりもよっぽどリアルな宇宙空間。全てを超越した様な空想! そこから 滲み出る得体のしれない驚き。

 このラストは当時「映画館から頭をひねって出てきた」と言われ、この映画はいわゆる 「前衛的」というカテゴリーに入れられていたのだけれど、こ〜のウルトラリアルな宇宙 空間の描写には単に「ワケが解らない」で片付けられない説得力があった。

 天文学や物理学を専攻し、兵器開発にも携わったという原作者のアーサー・C・クラークが科学 を突き詰めた上に出て来た哲学だからこそ、言い知れぬ説得力があったのかもしれません。

 本作で特殊効果を担当したダグラス・トランブルは、以降かの「サイレント・ランニング」〜 「未知との遭遇」〜「ブレード・ランナー」を産み出して、当時のSFファンの間では神様 みたいに言われてましたね。

 本作を初めてテレビ放映したのは日曜洋画劇場でした。その時の淀川長治さんの解説をよく 覚えています「この映画を放映出来るのは自慢ですねぇ」って、しかもその時に放映時間に合せて 本編をキューブリック自身が編集し! 「もうこれ以上触っちゃいけない!」と念を押して行った のだという。
 当時の放映版のビデオはキューブリックファンにとって貴重な資料でしょうね。

 しかしてキューブリックという監督の作品作りに対するこだわりには数々の逸話が残っています ね。本作の関係者向けの試写会では自分で映写機を操作したとか、自主映画みたいですね(笑)。

 他にも「フルメタル・ジャケット」の日本語版字幕スーパーを製作するにあたって、一度日本語 にしたセリフをもう一度英語に訳させてチェックしたという。

 執念とも言えるこのこだわりには、昔クロサワが「影武者」の試写の時会場のスピーカーが気に入らず、 入れ換える為に試写を延期したという話にも通じるものがありますね。

 こうした執念で作られた作品だからこそ見る人を魅了して止まないのかもしれませんねぇ。 映画ファンにとって、こうしたご馳走を作ってくれる監督がもういなくなってしまったというのは 寂しいことです。

 昔はこの映画、映画館で見なくちゃ魅力が伝わらない、と思ってましたけど、最近じゃ誰もが持っ てる大画面テレビでなら、底抜けの宇宙空間のニュアンスも伝わるのかな。

 それにしても、1999年の「ノストラダムス」もそうだけど今はもう「2001年」から10年以上も時 を経てしまってることには愕然としてしまう。

 オレ等は既に子供の頃に夢見た未来よりずっと先まで来てしまってるんですよねぇ……。



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